相続不動産の売却では、複雑な手続きや専門的な知識を要するため、素人の方にとってはハードルが高く感じるはずです。そのため不動産の専門業者に相談したり、司法書士に代行を依頼するケースも、決して少なくありません。

その場合には相談や打ち合わせをスムーズかつ順調に進めるためにも、不動産に関する登記や売却の流れ、そして2種類の相続登記とそれぞれのメリット・デメリットなども含めて、基本的な知識を抑えておくことが、事前準備として求められます。

相続不動産の売却で相続登記が必要な理由

家や土地を相続したけれど、維持できないので売却を検討している、まとまった金銭が必要になったので、相続不動産を現金化したい、こんな方もいることでしょう。いずれにせよ事情や動機は何であれ、相続不動産を売却するのであれば、その前提として売り主である相続人名義の登記が必要になります。

相続登記が必要な理由や根拠として求められるのが、民法177条です。これは不動産に関する権利を第三者に対して主張するためには、登記が不可欠になるという条文。すなわち相続人が相続不動産を売却する場合、相続人名義の不動産登記がなければ、自ら正当な権利を主張する利害関係者には、権利の主張ができないことを意味します。

例えば被相続人から相続不動産を受け継いだ相続人が、名義変更の登記をしていない場合、別の相続人が当該不動産を登記した上で売却してしまうと、その買い手に対して所有権を主張することが難しくなります。いずれにせよ、相続不動産を売却をするのであれば、相続不動産の名義変更たる相続登記の完了が、大前提になります。

相続不動産の売却の流れと2種類の相続登記

まず相続が発生したら、相続人全員による遺産分割協議を行い、相続財産の配分や帰属などについて決定します。相続財産に不動産があれば、遺産分割協議の決定に基づいて、相続人名義の登記変更を法務局へ申請。さらに当該不動産の売却を希望するのであれば、不動産会社等へ売却や各種手続きの代行を依頼し、買い手が決まれば売買契約を締結します。

その後、売却代金の受領と同時に、相続人から買主への所有権移転登記の申請や、物件の引き渡しを行います。ちなみに相続登記には共有名義と単独名義があり、2種類の相続登記とそれぞれのメリット・デメリットを知っておくことも重要です。

前者はその名の通り、相続人全員の共有名義にする方法、そして後者は複数相続人から選ばれた、代表相続人の名義で登記を行う方法です。共有登記の主なメリットは、複数相続人の一部が勝手に売却してしまうようなリスクを回避できること。

その一方で主なデメリットは、売買契約の際に相続人全員の同意や売却手続きの参加が必要になって、手間や時間がかかることです。この点、名義人である代表相続人一人のみでよい単独名義には、大きなメリットがあると言えます。

その反面のデメリットとしては、代表相続人が勝手に売買契約を締結してしまい、他の相続人とトラブルになりやすいリスクがあることです。

相続不動産の売却には相続登記が不可欠!

相続登記は第三者に対して、権利を主張するための重要な根拠になります。もちろんこれは相続不動産でも同じことが言えます。

相続不動産の売却を希望するのであれば、あらかじめ売却の流れを抑える同時に、相続登記が必要な理由、そして2種類の相続登記とそれぞれのメリット・デメリットなども含めて理解しておくことが、その後のスムーズな取引に役立つはずです。